恋愛日記

恋愛日記 その31

柴田さんはどうなのだろう。
私の事をどう思っているんだろう。

誰とでもデートするようなタイプじゃないし、
遊んでばかりいるようにも見えない。
しかし、私に対して恋愛感情を持っているわけでもなさそうだ。

なぜ私とデートするんだろう。
どうなのだろう。
私の気持ちだけが空回りしているのだろうか。


恋愛日記 その32

来週の予定を決めるため、柴田さんに電話をする。

プルルルルルル…。プルルルルルル…。
プルルルルルル…。プルルルルルル…。 ←いつもなかなか出ない。動作が遅いのか?
プルルルルルル…。プルルルルルル…。
プツッ。

「はぃ」
「あ、生島です」
「はぁい」
「早速だけど、来週の予定はどうでしょうか?」
「んーと、来週は…、9と…10」
「って事は、火曜日と水曜日だよな。
 んー、じゃ、9日の火曜日で」 ←とにかく早く会いたい
「はぁい」
「うん。○○とかをブラブラするって事で」
「はぁい」
「あ、今思ったけど、雨とか降らないよなー」 ←今夜は雨だったのね
「うーん」
「あそこで雨降ると辛いなー。屋根がないところが多いし」
「うん」
「でも、まあ、とりあえず9日って事で」
「はぁい」

……(中略)……

「んじゃ、バイバーイ」
「はぁい」
ガチャ。

急いで新聞の週間天気予報を確認する。

 7日  8日  9日 10日
くもり くもり くもり・雨

本当だな?降るんじゃないぞ?
9日だけは頼むぞ。


恋愛日記 その33

前回のデートで手をつないで歩く事に成功した。
当然、今回のデートでも手をつないで歩くつもりだ。
前回は映画が終わったあと、駅までの帰り道の間だけだったので
時間も距離も非常に短かった。
今回のデート中、常に手をつないでおく事により、
手をつなぐ事は自然な事である」という印象をつけるのだ。

しかし、雨が降るとそれができなくなる。
まあ、2人がそれぞれ傘をさして歩くのではなく、
1つの傘に2人が入って歩く事になるとは思うが(たぶん。っていうか希望)、
その場合、柴田さん側の手に傘を持っているので手をつなげないのだ。

恋人同士なら女の子が男の腕に手を回すだろうが、
そういう事にはなりそうにない。
っていうか、たぶんしてくれない!

せっかく前回がんばって、「手をつなぐ事はOK」という事実を作ったのに
今回、手をつなげなければ、
「手をつなぐ事はOK」を確実なものにできなくなってしまう。
そのためにも今回のデートだけは雨では困るのだ。

頼む!
これからの私の人生で、外出する日がすべて雨でも構わないから
9日だけは晴れていてくれ!


恋愛日記 その34

いよいよ9日である。
朝起きて、すぐに空を見る。

うむむむ…。
雨は降っていないが、雨が降ってもおかしくない色だ。
どうなんだ?
降るのか?降らないのか?

できれば傘すら持っていきたくない。
私のカバンは手にさげるタイプのものだ。
つまり、常に片手がふさがっている。
たとえ雨が降ってなくても、傘があれば空いている方の手で傘を持つ事になるだろう。
その場合、屋根のあるから傘をささなくてもいい場合でも、
両手がふさがっているために柴田さんと手をつなぐ事ができない。

「傘を持っていかなくてもいい」というのがベストなのだ。
しかし…。
もし雨が降った場合に、私が傘を持っていなければ
それはそれでダメだろう。
一応、カバンには常に折りたたみ傘を入れているが、
柴田さんと2人で入るには小さい。

ちくしょー。
なんで映画に行った日には晴れてて
外でブラブラしようって日に雨なんだ!

朝食をすませてシャワーを浴び、
出勤のためのスーツに着替える。
ちょうどめざましテレビの天気予報の時間だ。
急いでチェック。

ダ、ダメだ。
降水確率60%である。
降水確率というのは40%を超えると、もう絶対雨になるような気がする。
ハッキリ言って40%でも100%でも一緒だ。
ドラクエの「ザオラル(50%の確率で生き返る呪文)」の「50%」は
なぜか妙に低いのに、降水確率の40%はなぜあんなに確実なんだ?
60%なんて、絶対降るって言ってるようなもんじゃないか。

いや、大丈夫。
「くもり」の状態で耐えてくれればいいのだ。
降水確率60%なんだから、降らない確率は40%である。
サザエさんとのジャンケンに勝つ確率よりも高いはずだ。

天気予報が終わり、「今日の占いカウントダウン」が始まる。

はわわわわわわわ!!
おうし座が12位!?
最下位じゃないか!
今日に限って、そうなのか?
くそー!ムーンプリンセス妃弥子め!
もうプリンセスとは認めんぞ!
(嘘のようなホントの話)


恋愛日記 その35

しかたがないので傘を持ってでかける。
あとはただ雨が降らない事を祈るだけである。

大丈夫、大丈夫。
私は運がいいはずだ。
500円を100円玉5枚で拾った事のある男だ。
テレビのCM中にチャンネルを変えてみたら
同じCMが流れてた事のある男だ。
アイスで「あたり」が出たので、もう一本もらったら
また「あたり」だった事のある男だ。

今日は赤信号に引っかからなかったし、
毎朝吠えられる犬にも吠えられなかった。
いけるはず!いけるはずだ!

お願いだ神様、雨を降らせないでくれ!
すべての晴れ男・晴れ女よ、共に出かけよう!
すべての雨男・雨女は自宅待機だ!!


恋愛日記 その36

11時頃、仕事をしていると
ついに雨が降ってきた。
はぁー、神様は意地悪だ。

こんな事なら10日(明日)に会う事にしとくんだった。
明日も雨なら、どっちを選んでも雨だったって事であきらめがつくけど、
もし明日が晴れだったら、すごく腹立つぞ。

とはいえ、柴田さんとの待ち合わせの6時が
待ち遠しくてしかたがなかった。

仕事が終わり、すぐに待ち合わせ場所へ向かう。
今日はいつもとは違うところで会うので
電車で2駅だけ移動する。
そこの駅の改札で待ち合わせなのだ。

6時になり、柴田さんが来た。
おおぅ。
今日はいつもと違って、茶色のコートにジーンズだ。
柴田さんのスボン姿は初めて見る。

よし!!
早速、計画実行である!

「手、つなごうか」

おっしゃあ!!
再び手をつなぐ事に成功!!
これで今日は「手つなぎデート」である。
私は手にさげるタイプのかばんと傘があるが、
左手だけで無理やり持つ。
ホントは両手でひとつずつ持った方が楽なのだが、
そうすると手がふさがってしまい、柴田さんと手をつなぐ事ができないのである。

ちなみに柴田さんは肩からさげるバッグなので
傘を持ってても大丈夫である(さらに、途中から傘は私が持ってあげてたし)。

注意すべきは、手を放さなければいけない場合である。
手つなぎデートの敵となるもの:

●建物の入り口にあるガラスの扉(手で押して開ける必要がある)
●2人分しか歩けない道での他の通行人(2人の間を通る奴がいる)
●雨のかかる場所(傘をささなきゃいけない)
●下りのエスカレーター(恐い)


できれば外をブラブラ歩いたり、ベンチに座って話したりしたかったのだが、
あいにく今日は雨なので建物の中をブラブラする。
ちょうどプリクラもあったので、プリクラも撮る。

傘をさして少し外を歩いてみたが、
デートスポットなのにもかかわらずガラガラで貸し切り状態である。
雨が降っているのにこんなとこに遊びに来る人はほとんどいないのだ。
食事をする店を選びながら歩く。

適当な店に入って、食事をしながらいろいろ話をする。

「あ、そうだ。写真撮ってもいい?」
コクリ。
「いや、デジカメなんだけどね、
 柴田さんの写真、欲しいなーと思って。
 では…」
「えっ、ひとりで!?
 それは、ちょっと…。写真とか苦手だし…」 ←私も撮られるのは苦手だ
「ええー!?ダメ?
 んじゃぁさ、話とかしながら意識しないように撮るから」
「だめだめだめだめ」

写真撮影、失敗
残念。

「んー。2人ならいいわけ?」
コクリ。
「えー?
 んじゃ、あの2人が横に並んで片手でカメラ持って
 手伸ばして自分らで撮るってやり方で?」
コクリ。
「うーん。わかった。
 柴田さん一人の写真が欲しかったんだけどなー
 じゃ、またあとで撮ろう」

さらに会話は続く。

「ここの観覧車、乗った事ある?」 ←小さな遊園地があるのだ
「ううん。ない」 ←よっしゃあ!
「じゃあ、あとで乗ろっか?」
コクリ。

よっしゃぁぁあああ!!
ここの観覧車は完全にカップル向けなのである。
家族連れなどが乗るような観覧車ではなく、
カップルがデートに使うためにあるようなデートスポットなのだ!
いざ!


恋愛日記 その37

食事を終え、雑貨屋などを見ながらブラブラと歩く。
結構、時間も遅くなってきたので
観覧車に乗りに行く事にした。

いつもならカップルの行列ができているはずだが、
今日は雨なので、それほど人はいない。
乗り物券を2枚買って観覧車に乗り込む。

しばらく景色を眺めたあと、
デジカメを片手に持って自分たちに向けて写真を撮る。
そしてまた景色を眺める。

しかぁし!!
観覧車は確かにムードいっぱいだが、
会話がなくなってしまった!!
せっかくの観覧車の中で雑談するのもバカみたいだし、
かといって、現段階で柴田さんに手を出すと
あきらかに嫌がられそうだ。
いや、ホントはめちゃめちゃ手を出したくなってたのを
一生懸命、我慢したんだけどね。

ああああー、しくじったー!!
観覧車は、
相手に手を出せる状態になってから乗るべきだった!!
だって、観覧車の中って何にもする事ないんだもん。

余談だが、観覧車ってちょうど頂上になった時にやたら嬉しくなるよね。
「あ、今、この観覧車が一番高いよ」
とかって喜んじゃうの。
それで下りていく時って
「あー、終わっちゃうのかー」
って感じで妙に寂しいよね。
柴田さんとは何の関係ないけど。


恋愛日記 その38

観覧車を降りて、すぐ近くにあったゲームセンターで少し遊び、
さらにプリクラも撮った。
そろそろ柴田さんの帰る時間になったので駅まで歩く。

しかし!!
今日のデートは、感触としてはすごくよかった!!
非常に仲がよかったのではないか!?

そう。私は決心した。
今、言った方がいいと思う。
いや、柴田さんに「付き合ってください」と言うのは今しかない!!

手をつなぎながら2人で歩く。
雨はもうほとんど降っていないが、
やはり、あたりに人は少ない。

「…俺と付き合って欲しいんだけど」
「……」 ←「えっ」という感じの驚き
「どうかなー?」
「…………」 ←なにやら悩んでる
「………」 ←とりあえず反応を待つしかない
「………………………………、
 ………………………………、
 ………………………………」 ←めちゃくちゃ考えてる様子
「………」 ←どうしようもないのでひたすら待つ
「………付き合うっていうのは……、
 なんか……縛られる感じがして……」
「ん……、大事にするよ?
 負担にならないようにするし」
「……ん………」
「え、好きな人がいるとか?」
「ううん……、それはいないけど……」
「…付き合うって事に抵抗ある?」
「………ん…………」
「だめかなー?」
「…ん………友達として……なら……」

世界で一番、私の嫌いなセリフである。

友達って何なんだ?
どこからどこまでが友達なんだ?
電話したり、2人だけで遊んだり、
一緒にプリクラ撮ったり、2人で映画見たり、
観覧車に乗ったり、手をつないで歩いたりする
どこのラインまでが友達なんだ?
その「友達」がいつか「恋人」に変わる時ってあるのか?

俺とどういうつもりで遊んでたんだろう?
遊びに誘ったり、電話で話したり、
手をつないで歩いたりするのを断らなかったのはなぜだ?
ホントは嫌だったのか?
断りきれなかっただけなのか?

ああ、女の子ってよくわからない。

女の子はよく「友達としてなら…」という断り方をするが、
実は男が一番傷つく言葉である。
ハッキリ言ってくれた方がどんなにいいか。
あいまいな答えが一番残酷なのだ。
変に期待させないでくれ。

一気に体の力が抜ける。
精神的にフラフラになった。

「2人で一緒に遊ぶのとかはいいわけ?」
「うん…」 ←よけいに意味がわからない
「そっか…」

付き合ってももらえないのに
2人で遊びに行く意味があるのだろうか。
単に遊びたい時は私は男友達を誘うだろう。
付き合えないとわかってて2人で遊びに行く意味はあるのだろうか。

この時、どれだけ「それじゃあ、もう遊ぶのとかはやめよう」と言おうと思った事か。
しかし、少しでも可能性が残ってる(と勝手に私が思っている)間は
男はそれに賭けてしまうのだ。

気まずい雰囲気のまま駅まで歩き、
改札口で柴田さんを見送った。

俺は自分が帰るための駅までフラフラと歩き、
かったるいまま電車の座席に座って
そのまま眠った。
とりあえず今は何も考えたくなかった。
体が妙にだるいのは風邪のせいなのだろうか。
頭が痛むのは熱のせいなのだろうか。
とにかく眠い。

地元に着くと、皮肉な事に空は晴れ、
オリオン座が見えていた。

でも「めざましテレビ」の占いって当たるんだね。


恋愛日記 その39

柴田さんとのデートを終え、家に帰ると、
母親が私の携帯電話を買ってきていた。

家の近くや私の職場の近くの店に
欲しい機種が売ってなかったため、
母親の職場の近くの店で代わりに契約してきてもらったのだ。

私は今までPHSを持っていたのだが、
携帯電話を買ったためにPHSの方はそのうち解約する。
そのため、PHSの電話番号を教えている知り合いには
新しい携帯の番号を教え直さなければならないのだ。

当然、柴田さんにも新しい携帯の番号を教える。
今日のデート中にも、
「家に帰ったら、新しい電話番号を教えるために電話するから」
と言ってあったのだ。

デートの帰り際にあんな事があって私は相当落ち込んでいるのだが、
約束してるので、とりあえず新しい携帯で柴田さんに電話をかける。

ツー…、ツー…、ツー…。
話し中のようだ。
5分ほど待とう

もう一度、電話をかけてみる。
ツー…、ツー…、ツー…。
また話し中だ。

うーーむ。
誰と話してるんだろ。

さらに5分ほど待って、もう一度電話してみる。

プルルルルルル…。プルルルルルル…。
プルルルルルル…。プルルルルルル…。
プツッ。
あ、出た。

「はぃ」
「あ、生島です」
「はぁい」
「えーと、言ってたとおり、新しい携帯が手に入ったから
 電話してみた。
 今、そっちに番号表示された?」
「えーと、あ、はぁい」
「んー。んじゃ、それ新しい携帯の番号だから。
 前のPHSはそのうち解約するから、
 新しい電話番号の方を携帯に登録しといて」
「はぁい」
「まあ、柴田さんの方からかけてくるような事は
 ないと思うけどね(笑)」 ←柴田さんは電話をかけるのが苦手なのだ
「う…たぶん」
「んじゃ、今日はそういう事で」
「はぁい」
「んじゃ、バイバーイ」
「あ、おやすみなさい」

柴田さんの声が妙に明るいのはなぜなんだろう。
やっぱり女の子ってよくわからない。
フラれたのに無理に明るく振る舞ってしまう自分もよくわからない。
今日はもう寝よう。
ああ、気が重い。

俺たちはどうなるのだろう。
次回、「恋愛日記」最終回。

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