親知らず日記

親知らず日記 その13

汗びっしょりです。外からはわかりませんが、
体の後ろ半分が全体的に濡れてます。
シートと接触している部分がジワジワと濡れてるようです。なぜか敬語です。

ああ、麻酔ね。痛いね。チクッとね。
そんなことどうでもいいよ。麻酔は脳につながらないもん。痛いうちに入らないよ。
本当に痛い時は腕が勝手に外側に開くんだよ。発見したよ。
人間痛いとラジオ体操第2を始めるんだよ。

再開ですよ。
イデデデデデデ
先生麻酔効いてる?追加したの?ホントに?

歯を抜くのは初めてじゃないけど、
今まで抜いたのは乳歯とか虫歯だったわけで。
つまり根っこが弱ったり抜ける準備ができてる歯ばかりだったわけで。
枯れ木を引っこ抜いてただけだったわけで。

親知らずってのはめちゃくちゃしっかり根付いてて
これからもそこに居座り続けようとしているわけで。
さらに奥歯なだけあってベンツみたいな頑丈さ。
枯れ木じゃなくて大樹ですよ。この木なんの木気になる木なわけですよ。

先生が作業がやめたので、もしかしたら終わったのか、と思ったら
道具を持ち替えてコンティニュー。まだ抜けてなかったのか。


親知らず日記 その14

イデッ!イダダ!

「はい、抜けましたー」

やっと抜けた。
抜けたところがどうなってるか、
舌で触ってみたいけど、怖いので我慢

軽くうがいをしたあと、止血のためにガーゼをかまされて放置される。
途中、
「気分悪いとかないですか?」
と聞かれるが、特に普通なので大丈夫だ。
歯と気分というのは何か関係があるのか。

さらに「抜歯をした方へ」というプリントを渡された。
抜いた後にできる「血餅」というゼリーのようなかさぶたを取ると
骨がむき出しの状態になって治りが遅くなったり痛みが出るので取らないようにとか、
刺激物を食べないようにとか、読んでると怖くなってくる。

あれ?

読み終わってボーッとしているとなんか頭が冷たくなってきた。
おおっ、これはヤバイかも。サーっと青ざめていく感じがする。
採血した直後と同じ感覚だ。
ガーゼを噛んで止血しているわけだが、
あとどれぐらい放置されているのだろう。言った方がいいのか。

いや我慢だ。どうせすぐ元に戻る。
貧血っぽく考えるから余計貧血になるんだ。
楽しいことを考えろ。えーっと今週のネクストコナンズヒントはなんだったかな。
ドラえもんの身長は129.3センチで、体重も……。

いや、ムリ。ごまかせない。

「すいません、ちょっと気分が」

ガーゼを噛みながら後ろにいた先生に言って、シートを倒してもらう。

ふー、はじめからこうすればよかった。
脳に血が戻るのがわかる。あのままだとブラックアウトしてたかも。


親知らず日記 その15

「あ、止血されてますねー」

ガーゼを外して先生が確認する。
血が止まったら今日は帰っていいようだ。
まだ2本、しかも下アゴの巨大なやつが残っているわけだけども。

歯を持って帰るか聞かれたけども断った。
もう十分。27年一緒にいたけど、ここでお別れだ。
チラッと見たら血まみれの歯が見えた。根っこが2センチぐらいありそう。長っ。

受付で麻酔と出血した時のためのガーゼをもらう。
やり遂げた。今日はやり遂げたぞ。


親知らず日記 その16

帰る時も意外と大丈夫。上アゴの細めの親知らずだったからかも。

とか思ってたら電車を降りた後にズシンという感覚が。
電車では寝てたので意識しなかっただけか。
数歩歩いた後に立ち止まりたくなるぐらい痛い。うずくまろうか。

気温が高いのも相まって汗がやたら出てくる。
自販機で飲み物を買ってその場で痛み止めを飲もうかと思うぐらい痛い。

10分ほど耐えながら家路を急いでいるとなんとか峠を越えた。
家に帰ってすぐに痛み止めを飲む。
痛み止めは4時間ほど間隔を空けないといけないらしく、今日はもう飲めない。

家に帰って鏡で抜歯したところを見てみる。
あっ、こんにゃくゼリーだ。こんにゃくゼリー(ぶどう味)がくっついてる。
これが「血餅」ってやつのようだ。口の中のかさぶただけど、
ホントにゼリーみたいでぷるぷるしてる。それがむしろ怖い。


親知らず日記 その17

親知らずを抜いて初めての食事だ。
左上の抜歯部で噛んでしまうと間違いなく嫌な思いをするだろうから
右側のみ使って噛む。
でも、怖いのは食事じゃなかった。その後だ。

歯を磨くのが怖い
(「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」の「目を開けるのが怖い」の言い方で)

歯ブラシが触れても出血するだろう。しかもうちの歯ブラシは極細毛。
傷口に針が差し込まれているのと変わらない。

しかし歯を磨かないと結局虫歯になるかもしれないというジレンマ。
しょうがないので鏡を見ながら恐る恐る磨く。地雷に注意だ


親知らず日記 その18

連続で抜歯するのは酷なので、
2本目の親知らずは20日後に抜くことになった。
ずいぶん先だ。

1本目の抜歯部についてはその後、痛み止めを飲むことなく
徐々に普通の歯茎となっていった。嬉しい。


親知らず日記 その19

そして20日後。2本目の抜歯の日。
しかも今回は下アゴだ。どう考えてもサイズもパワーも前回より上だ。

名前を呼ばれてシートに横たわる。
ここの歯医者は各シートごとに液晶モニタが設置されていて
毎回DVDが流れているのだが、今日は「キル・ビル」だ。

と思ってたら、先生が来た。
今日は前の先生じゃなく、院長らしき人だ。
前の先生が松たか子だとすると、今回の先生は細木数子だ。強そう

前回と同じく、まず麻酔を打つ。
外側だけでなく、内側の歯茎にも麻酔を打つ。
歯を境に、内外両方から攻めるのだ。

そしてそのまま先生が器具を持ち出す。
えっ、もう麻酔効いたの?ホントに?


親知らず日記 その20

先生が器具で歯をガッシリはさむ。
ものすごく力が入っているのがわかる。歯がピキピキ鳴ってる。
砕くのか?

聞いたことがある。親知らずを抜く時にそのままでは抜かず、
一旦砕いてからいくつかのパーツに分けて抜歯する方法があるそうだ。
たしかノミとハンマーみたいなもので叩いて砕くような話だったが、
もしかしてこの先生はペンチで歯を挟み砕こうとしているのか?

ピキピキピキ。そうこう考えているうちにどんどん力が強まる。
またもや骨伝導で音が聞こえる。
今回も脳に直接つながっているようなダイレクト感。

グキグキグキ。うぎゃ。
パキャピキ。いたたたたた。
グリッ。痛い!ねじってるねじってる!
バキッ!バキッ!いたたたたただだだだだダ!

「はい、抜けましたー」


親知らず日記 その21

おおっ、もう抜けた。早い。でも痛い。
砕くのかと思ってたけど、単にしっかり挟んで抜こうとしているだけだった。
前より短かったけど、瞬間的な痛さはかなり上。
でも今回の方が気持ち的にはちょっとだけ楽だった。

抜歯する前に見た「キル・ビル」はちょうど沖縄のシーンだったけど、
歯が抜けてからもまだ沖縄だった。それぐらい短時間。


親知らず日記 その22

前と同じく、ガーゼを噛まされて止血する。
痛みで放心状態だったので先生に「大丈夫ですか?」とか言われた。
今回も歯は持って帰らない。
抜けた親知らずはさすがに下アゴらしい、かなりしっかりしたデキだった。

止血が終わるまで待っている間、妙に汗が出てくる。
冷房を強めて欲しい。抜く時の嫌な汗が今まとめて出てきた感じだ。

思ったよりも普通に抜けてよかった。
歯茎を切開して歯をむき出しにして抜歯したり、
最悪の場合、頬のところを切開して
口の外側から歯を取り除いたりするというのも聞いたことがあるだけに、
抜くだけで終われた今回はよかった。
縫合したり抜糸したりすることを考えれば負担が軽い。


親知らず日記 その23

止血も終わったので、歯医者を後にする。
下アゴの場合は傷口が深いせいか、
化膿止めのための抗生物質をもらった。
痛み止めの薬と違って、渡された分をすべて飲み切らないといけないらしい。

今頃麻酔が染みてきたのか、舌の部分までしびれてきた。
誰かに会ってもちゃんとしゃべれそうにない。
たとえ小西真奈美に逆ナンパされたとしても
対応できないぐらいしびれてる。

歩くのが辛い。歩く振動に合わせて痛みが来る。
電車に乗っている間はあまり痛みがないのだが、
降りて歩き始めるとまた痛い。
ズキズキとした痛みに、夕食を取るのもやめようかと思うぐらい
テンションが下がった。

しかも今晩はラーメン。ムリ。食べづらい。
歯を抜いた右側の歯では噛めないので、頭を左に傾けながら食べる。
いつもは唐辛子をかけて食べるけど、
今日はひどいことになりそうだったので、あきらめてそのままで食べる。
これからしばらくはこの不便な食べ方になりそうだ。


親知らず日記 その24

鏡で覗いてみると、今回もある。こんにゃくゼリー。


一番奥のやつです。グロくてすみません。

歯の噛み合わせのせいか、
ゼリーが綺麗に歯の形に出来上がっている。赤い歯みたいだ。

しかも次の日、もう一度見てみると
なぜか白く変色していた。固まったのかもしれないが、
せっかく抜いたのにまた親知らずが生えてきたのかと思って
ちょっとあせった。

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