親知らず日記

親知らず日記 その25

今回も慎重に慎重を重ねて歯を磨いていたのに、
気がついたらこんにゃくゼリーがなくなってた。


抜けた部分に穴がポッカリ。空っぽ。

食事の時、その穴の部分では噛まないようにしてるんだけど、
どうしても米粒とかが入ってしまう。
怖がって歯ブラシを止めてると
どんどん食べかすがたまっていくような気さえする。

いずれ穴は埋まるんだろうけど、
食べかすを掃除せずにほったらかしにしてたらどうなるんだろう。
治癒する時に押し出してくれるならいいけど、
食べかすが封入されてしまうとどうなるんだ。切開するのか?

などと考えてると怖くなってきたし、歯茎にもよくないだろうから
穴を清潔に保つべく、歯磨きすることにした。

歯磨きのたびに出血して洗面所が赤く染まるが
歯茎が治るにつれておさまるだろう。


親知らず日記 その26

また3週間ほど期間を空けて、最後の親知らず抜歯。

こないだ下アゴの親知らずを抜いた経験があるので
だいぶ気が楽だ。

最後は左奥の親知らずだが、鏡で確認すると半分ぐらい
歯茎が乗っかってて歯が見えづらい。
このまま抜けるのだろうか。

3本目とはいえ、やはり緊張する。
汗をかいているのは夏のせいだけではない。

シートが倒され麻酔が打たれる。
いい加減、麻酔も打たれ慣れていい頃だが、やはり嫌な気持ちだ。
針が刺さる瞬間のチクリなんか鼻毛を抜くよりも遥かに軽い痛みのはずなのに
どうにも気持ち悪い。

ぐんぐんと麻酔が入っていく。早くも舌の奥がしびれてきた。
前回と同じく、歯の外側だけでなく内側の方の歯茎にも
麻酔が打たれた。
「軽くうがいをしてください」と言われるが
感覚の弱くなった口でうまく水が吐き出せない。老人か。

そのまま5分ほど放置される。


親知らず日記 その27

ボーッと夕方の空を見ていた。
6時だが、夏なのでまだ夕焼けにはなっていない。日が長いのだ。
水色の微妙なグラデーションが窓の外に広がっている。

などとカッコつけていると
ビリビリと口の左奥の感覚がほとんどなくなっていた。
麻酔が効くまでの間ってのは本当に暇だ。
抜歯のことばかり考えてしまうと
怯えて過ごす5分間になってしまうが、
怯えても怯えなくても間違いなく抜歯は行われるので
どうせなら他のことを考えていた方がいい。3本目にして悟りを開いた。

2本目の時と同じ、近距離パワー型の院長が来てシートを倒す。
ガーゼを口に放り込まれ、顔をやや先生の方に向けさせられる。
ここが歯医者じゃなかったらラブシーンのような格好だが、
間違いなくここは歯医者だ。

器具でグッグッと歯か歯茎を押している感じがする。
鏡で見たときに歯茎がかぶさったような感じで歯が見えにくかったので
もしかしたら歯茎を押し込んで歯をむき出しにしているのかもしれない。

その後ガッと歯がつかまれた感覚があり、
グイグイと抜きにかかった。
ただ、今日は麻酔がかなり効いているのか、前回よりもかなり感覚が薄く
痛みがほとんどない。
ぐぐぐっと歯が抜けつつあるのはわかるものの、
ほとんど抵抗がない感じだ。

「はい、抜けましたー」

え?もう?
全然痛くなかった。麻酔が効きまくってたのか、
歯の根っこが弱っていたのか。

クライマックスなのに、この盛り上がりのなさ。
2本目と3本目、逆の順番の方がよかったかも。


親知らず日記 その28

下アゴの抜歯の時の麻酔は結構多いのか、
2時間ぐらい経ってもまだしびれているほど。

家に帰ると夕食がうな丼とそばだ。
抜歯直後にはかなり食べづらいメニュー。
昨日までは右の抜歯部をいたわって左でばかり噛んでいたのに
今日からは右で噛む生活が始まる。
前回の経験から、最低でも2週間ぐらいは片方だけで噛む生活になりそうだ。

しかも当日はまだ傷が新しいので、ちょっとしたことですぐ出血する。
血はすぐ止まるものの、夜寝るまでに何度か血を味わった。


親知らず日記 その29

今までの2本は断ったが、3本目だけ
エッセイに掲載するためだけに歯をもらってきた。


3本目の親知らず。百円玉はサイズ比較のためであって
抜歯して百円玉が出てきたわけではない。

かなり大きな痛みを伴った2本目は
この歯よりももうちょっと根っこが長かったと思う。
今思えばあれをもらって写真に撮ればよかった。

歯を見ると結構汚れている。
やはり親知らずはたとえまっすぐ生えていて直接害がなくても
歯磨きで清潔さを保つのはかなり難しいようだ。
このまま抜かなかったとしても、将来は虫歯になっていたかもしれない。


親知らず日記 その30

すべての人に同じように当てはまるわけではないと思うが
参考までに費用に関する情報も書いておく。

上アゴ左奥親知らず抜歯  1930円
翌日の消毒   170円
下アゴ右奥親知らず抜歯  3750円
翌日の消毒   170円
下アゴ左奥親知らず抜歯  4160円
翌日の消毒   170円


合計 10350円

かかった費用の細かい内訳までは
調べてないのでわからない。

すべて保険を利用した治療の自己負担分の金額だが、
今回、親知らずの抜歯のみの通院ではなく
それまでに虫歯治療のために通っていたので
その時に撮ったレントゲン写真が親知らず抜歯の際にも利用できた。
もし抜歯のためだけに行くとしてもレントゲンを撮るだろうから
その分の費用は別にかかるはずだ。

こうやって見ると、保険を使ったとはいえ
結構な額になっている。
抜歯するまでの虫歯治療の分も合わせると
もっと額は大きくなるのだ。
虫歯が悪化するまでねばった分、
治療期間も伸びたし、金額も大きくなった。


親知らず日記 その31

親知らずを抜く、というととてつもなく嫌な気持ちになるかもしれないが、
放置して将来どうしようもないほどに悪化してから処置するよりも
普通に生えている時に短時間の痛みに耐えて抜歯した方が
はるかに楽かもしれない。そう思えば抜いていてよかった気がする。

抜いた親知らずが再び生えてくることは絶対にないが、
無事に生えている親知らずが将来もずっと無事か、というと
そうではない可能性もあるのだ。
いつ爆発するかわからない爆弾を抱えて生活するより
早いうちに撤去した方が安心できる。

まっすぐに生えていた私の親知らずでさえ、
たまに周りの歯茎が腫れたりしていた。
普段は親知らずの刺激に抵抗できていた歯茎が、
疲れて体力が落ちたときなどに、炎症を起こしていたらしい。

でも抜歯した今となってはその心配はない。
親知らずがなくなって間もないので、
何か食べた時にあまり奥で噛もうとすると
歯がないところで噛んでしまいそうな変な感覚にはなるが、
それもじきに慣れるだろう。

残り1本、上アゴの右奥に親知らずが眠っているはずだが
まったく生えてきていない上に特に問題も指摘されていないので
今のところはそのままだ。

私が今後、親知らずに関わるとすれば
この1本が悪化するか生えてくるかした時だけだ。
4本とも残っている人から比べればずっと危険は少ない。


親知らず日記 その32

それから、歯医者によっても処置の仕方や
作業の手際に差があるだろう。
私が今回通院したところは女性医師ばかりで、
丁寧な作業と細かい説明をしてくれるクリニックだったので非常に信頼できた。

4年ほど前に行っていたところも作業が丁寧で、
できる限り痛くないように処置してくれた。

子供の頃に通ったところはかなり痛かったし、雑なような気もした。
歯医者嫌いになったのはこの歯医者の影響が大きい。

時代が進んだことによる医学の向上や
器具の発達も関係しているかもしれないが、
やはり病院や医師によって差はあると思う。

どの歯医者に通うのか、事前にできる限り
口コミの評判で下調べしておくと、楽に治療を乗り越えることができるだろう。

自分の行動範囲の中に信頼できる歯医者があるというのは
非常に安心だ。
ずっと歯医者嫌いだった私も、今回の通院によって
その気持ちがずいぶん薄らいできた。

「症状が悪化する前に、信頼できる歯医者へ」
単純だが、これに尽きる。

親知らず日記 完
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