上京日記

上京日記 その14

いよいよ授賞式当日。
式の規模がわからず、スーツか私服か迷ったが、
念のためにスーツにする。

スーツを着るべき場所に
私服を着て行って怒られることはあっても
私服でもいい場所に
スーツを着て行って怒られることはないだろう。


いつもの通勤とは少し行き方が変わるが
ほとんどいつもの時間で行けるはず。

ただ、あまりに時間きっちりだと何かあった時に怖いので
30分ほど余裕を持って出発する。

普段なら降りない駅で降り、電車を乗り換えて
新幹線乗り場のある新神戸駅を目指す。


なぜか落ち込んでいる中学生。

やめてくれ、不吉だ。


上京日記 その15

初めて降りる駅だ。
「新幹線のりば」と書かれた表示をひたすらたどって行く。
頼りになるのは看板だけだ。

普段意識していない案内表示だが
実際頼りにしながら歩いてみると、絶妙な位置と距離で配置されている。
しばらく歩いて不安になった頃に次の案内がある。

RPGのような気分だ。お使いミッション。
「南にある新幹線の駅に行け」。


結局、ものすごく順調にたどり着き(当たり前)、
新幹線の改札口を発見する。
新幹線の出発まで1時間。時間あまりすぎだ。

しかたがないので休憩所のイスに腰掛ける。
朝8時というのに人が多い。
ビジネスマン、高校生、そしておばあちゃん。
通勤のときにも見かけたりするが、なぜこの時間におばあちゃんがいるのだ。

ふと見るとお土産売り場まである。買おうか。
いや落ち着け。ここはまだ地元だ。


上京日記 その16

持ってきた文庫本を少し読む。
時間潰しのために持ってきたが、
無事に東京へ行けるか不安であまり頭に入らない。

時間を見る。まだ8時15分。新幹線は8時55分発だ。
これならぴったりの時間に家を出ても問題なかった。


周囲に高校生が増えてきた。
なんだ修学旅行か。それとも通学なのか。
まさか新幹線に乗るのだろうか。高校生で新幹線なんてまだ早すぎる。

新幹線以外の路線も併設されているので
そっちの駅に行くのかもしれない。
どちらにしても周りの雰囲気から浮いている気がする。
スーツを着たサラリーマン風の男が
朝の忙しい最中に休憩所に座っているだけで
違和感がある。


とりあえず、改札の中に入っておくか。

新幹線のチケットを取り出し、何度も確認して
「行き」のチケットの方を手に持つ。
1回の乗車分なのに2枚あるので戸惑うが
新神戸駅の改札は駅員が手動で切符を切るのでまだ安心だ。
これが自動改札で、手続きを間違えてブザーが鳴りつつ
扉が閉まったりしたら、それだけでノックダウンだ。家に帰りたくなる。

改札を入ると驚いた。まだかなり広い。
むしろゆったりしたソファーの休憩所があり、
大きなテレビにニュースが流れている。
電光掲示板には新幹線の案内。周囲は年上らしき乗客ばかり。

大人向けのエリアだ。
うまい具合にソファーが空いたので、そこに座る。
再び文庫本を取り出して読む。頭に入らないが、読むフリでもいい。

周りを見ると8割はスーツを着たサラリーマンだ。自分と同じ。
静かだし、安心できる。
横を見るとホットドックまで売っている。
好物だが全然お腹が減ってない。

そのホットドック店の女の子を常連らしき客が口説いていたが
ほとんど愛想笑いだけで流されていた。不吉だ。


上京日記 その17

8時45分。10分前だ。いよいよだ。
何度もチケットを確認する。
間違いない。8時55分発のぞみ44号。5号車。

ホームに上がってみる。かなり広い。
新幹線の乗客というのは層が限られるのか、
見かける客はビジネスマンか、ちらほら旅行客がいるぐらいだ。

5号車が停まる位置に陣取る。
危険防止のためか、普通の電車のホームにはない、
路線の間に自動で開閉する柵が設けられている。

私が乗る電車は700系のぞみだ。ニュースでも名前を聞く最新型。
待っている間に向かいのホームに「ひかり」が入ってきた。


「のぞみ」より一世代古いはずだが、
それでも普通にカッコいい。未来っぽい。

「ひかり」の登場にドキドキしていると、アナウンスが鳴り
いよいよ「のぞみ」が入ってくる。
トンネルの向こうが明るくなってきた。走ってくるのだ。


と、期待して「のぞみ」を待っていたが
実際に見てみると妙にブサイクだった。いいのか、それで。
これなら「ひかり」の方がカッコいい。

思わず写真を撮る。


が、思いのほか速くてうまく撮れなかった。

ブサイクだけど速い。それが700系のぞみ。


上京日記 その18

再度チケットを確認し(確認しすぎ)、
指定席に座る。
自分の席に誰かが勝手に座ってた、というトラブルを聞いたりするが
そういうこともなく平和に座ることができた。

隣の人も寝ているだけなので非常に静かだ。

ベルが鳴り、発車する。
普段の電車とは違う、スムーズな発車。
そして滑るように加速。速い。Gを感じる。

外の景色も徐々にブレて見える。
さらに加速する。どんどん速くなる。


と思ったらトンネル。残念。

やけにトンネルが長い。長すぎる。

トンネルを抜けると雪国なんじゃないか。
ちょっと行き過ぎだ。


上京日記 その19

暇つぶしのために文庫本、
それとゲームボーイも持ってきたのだが
せっかくの新幹線ということもあって
窓の外や車内をいろいろ見ていた。

さすがに速い。200キロぐらい出るはずだ。
窓の外、景色が流れる速度が気持ちいい。


普通列車なんて遅すぎ。


窓の外を見てるといきなり横揺れした。
地震か?妙な衝撃。

と思ったら反対側の窓の向こうに新幹線。
別の列車とすれ違っているのだ。
相対速度で400キロともなると衝撃がすごい。
こんなに揺れて大丈夫かというぐらいの揺れが来る。

揺れ続けるわけではなくて、最初にすれ違う瞬間に一度、
そしてすれ違いが終わる瞬間にもう一度だ。


さらに窓の外を見ていると、妙な建物。

パチンコ屋かな。



と思ってよく見ると、


「OK牧場」って書いてある。

新幹線ってスゲエ。


上京日記 その20

座っていると、女の人がカートを押しながら入ってきた。

「お茶にーお弁当ー、ビールはいかがですかー?」

これが噂の車内販売か。

何が売っているんだろう。
お腹が減ってないから弁当とかはいらないけど
飲み物ぐらい買ってもいいかも。

メニューってあるのか?
他の乗客はメニューを知り尽くしているかのごとく、
「ビールひとつ」「お茶ください」と声をかけていく。
まだこちらからはカートの詳細が見えない。
そんなにいろいろ積まれているのだろうか。

カートが横を通り過ぎるときに
カートの側面に飲み物の一覧が書かれているのを発見。
えーと、お茶、オレンジジュース、ビー……速ぇーー。
ゆっくりに見えるのに意外と速い。
落ち着いてメニューを選んでる暇なんてない。

まあ、いい。喉なんて渇いてないしな。


上京日記 その21

トンネルの中に入ったときに、
車両の端のドアの上にランプがついているのに気づいた。

並んだ男女を模したマークと、電話の受話器のマークだ。
おそらくトイレと公衆電話を表しているんだろう。
トイレの方だけが点灯している。

ドアの向こう側にトイレがある、という案内だろうか。
電話の方が消えているのは
トイレしかないということか。

しかし、しばらくしてから見るとランプが消えていた。
両方とも消えている。
点いたり消えたりするのか。ということは案内の意味ではない。
となると、使用中かどうかを表しているに違いない。

問題は、点いている時が使用中なのか
消えているときが使用中なのかがわからないということだ。

トイレに立つ人は多く、数が限られているトイレは
頻繁に使用されている。
使用されない時間が長いと割と判断もしやすいのだが、
点いてる時間も消えてる時間も同じぐらいなのだ。

これを読み違えてトイレに立つのは無意味だし、
周囲の客にも新幹線ルーキーとバレるだろう。

論理的に考えてみる。
ランプがついている方が目立つ。
トイレの目的から考えると、空いている時の方が目立つべきではないのか。
「今なら入れますよ」。
そうアピールする方が客にとってはありがたいはず。

もしそうなら、あのランプの存在を知らない人にとって
トイレを案内する表示としても受け取れるわけだ。
ランプを点灯してトイレを案内しておきながら「使用中」というのはおかしい。

決まりだ!
ランプが点いているのは「トイレが空いている」という意味!


うぅ。
トイレのことばかり考えていたら尿意をもよおしてきた。
ランプの意味さえ確信がない上に、
頻繁に人が出入りしているようで落ち着かない。

東京まで1時間半。
うむ。我慢しよう。


上京日記 その22

トイレのことはもういい。

窓の外を見る。
またもや変な建物。


なんだこれ。

「SANYO」って書いてある。
端っことかちょっと浮いてる。地震に弱そう。

新幹線に乗ってから、もう2時間。
乗車直後のような感激が薄れてきた。

早い話、


飽きてきた。

片道3時間は長い。東京はこんなに遠いのか。


上京日記 その23

途中で乗ってきた中年4人組が隣で弁当を食べ、
ビールを飲む姿にストレスを感じながら
半分寝たような状態で東京を待つ。

シートは自由にリクライニングさせられる。
私の席は乗ったときにちょうどいい具合にセットされてたので
そのまま座っているが、中にはフル傾斜させて
背面飛びでもしてそうなオヤジまでいる。

他にもしょっちゅう席を立ち、
そのたびに通路側の客をまたぐ客もいる。
ほとんど席を立つことのない私は窓側の指定席を選んで正解だった。

「まもなくー東京です」

アナウンスが流れる。新幹線が減速するのを感じる。
いよいよだ。

アナウンスを聞いて荷物をまとめ、出入り口まで移動する客もいるが、
この「まもなく」のアナウンスが流れてから
実際に停車するまでがやたら長い。2分ぐらいはまだ走っている。
普通に5キロぐらいの距離は走っていそうだ。

時間はかなり余裕があるので、席に座って待つ。

止まるかどうかぐらいの速度になると
乗客全員がズラッと通路に並ぶ。ここで終着なのだ。

行列に続いてゆっくりと進み、そして


















着!

写真はイメージ。私の中の東京っぽさを表現。
まだ駅から出てません。

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