幸せ家族
−グローバル−


グローバル

七時になると、高田家ではいつものように夕食が始まる。
一家の主である洋二が、仕事を終えて六時半に家に帰ってくるので
夕食は七時ごろがちょうどいいのだ。

ダイニングのテーブルの上に料理が並べられている。
今日の夕食は野菜炒めと魚のフライ、それにシチューだ。
夕食時になると家族はここに集まってくる。

今日も七時ちょうどにみんなが席についた。

父・洋二、母・美江子、長男・悟、それぞれの前に並べられたシチュー皿から
温かそうな湯気が昇っている。

みんながそろうと、洋二が「じゃあ」といった感じに
箸を取り、食べ始めるので、美江子と悟も
それに合わせて食べ始めるのだ。

「悟は何年生になったのかな」
洋二が魚のフライを口に運びながら言った。

「六年生よね」
美江子が確認するように隣に座っている悟の方に顔を向ける。

「そうだよ。来年はもう中学生だよ」
悟は少し誇らしげに答えた。
中学生。その大人らしい響きに悟はずっと憧れていたのだ。

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父・洋二の場合
母・美江子の場合
長男・悟の場合


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洋二の口の中で、フライがさくりと音を立てて崩れる。
「今日のごはんもうまいな」
熱いフライで口をやけどしないように、はふはふと
口を大きく開けて息をする。

「うん。みんなで食べるとおいしいね」
その様子を見て、悟も洋二に対抗するかのように
フライに箸をつけた。

「ありがとう。そう言ってもらえると作った甲斐があったわ」
作った料理をこんなにおいしそうに食べてもらえるのは
料理を作る方としてはとても嬉しいものだった。

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父・洋二の場合
母・美江子の場合
長男・悟の場合


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「今日は悟がごはん作るの、手伝ってくれたのよね」

「うん。野菜とか切ったり、お皿にシチュー入れたのも僕だよ」
悟は待ってましたとばかりに自分の手伝った部分を
洋二に説明した。

「そうか。悟、えらいな」
洋二は感心したようにうなずきながら、もう一つフライを口に放りこんだ。

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父・洋二の場合
母・美江子の場合
長男・悟の場合


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「これからは男の人も料理ぐらいできないとね」

「そうだな。今は男もそういう事する時代だな」
しかし、そう言いながらも、料理などした事がない洋二は
少し肩身のせまい思いをした。
洋二が子供の頃は、「男は仕事が命。台所には入るな」と言われていた。
それを今になって料理などと言われても困る。

「うん。これからも僕がんばるよ」
しかし、そんな洋二の思いとは逆に、悟はますます意欲を強めた。

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父・洋二の場合
母・美江子の場合
長男・悟の場合


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「悟。どうだ、学校の勉強は」
洋二は話題を変えようと悟の学校の話を持ち出した。

「うん。結構いい方だよ。こないだのテストも90点だったもん」
友達には自慢のようで嫌みな事でも
父に対してなら、純粋に褒めてもらうために言う事ができる。

「そうね。がんばってるみたいね」
子供の頃から猛勉強させるつもりはないが
それでも子供の成績がいいのは美江子も悪い気がしなかった。

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父・洋二の場合
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「パパもお仕事がんばってね」

「ああ。バリバリ稼ぐぞ」
洋二はガッツポーズをするように
箸を握ったまま右手を軽く上げた。

「がんばってね。パパ」
家の手伝いや、勉強に励む息子と
仕事に打ち込む夫を持って、美江子はとても幸せだった。

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父・洋二の場合
母・美江子の場合
長男・悟の場合


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「実際、仕事の方もうまくいっててな」
悟のように思い切り自慢するのは気が引けるが、
それでもやはり洋二も自分の努力を認めてもらいたかった。

「すごいじゃない。さすがパパね」

「やったね、パパ。僕、友達に自慢できるよ」
美江子と悟に言われ、洋二は少し気分をよくした。
この歳になると人から褒められる事など
なかなかあるものではない。
家族の前だからこそ素直になれるのだ。

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父・洋二の場合
母・美江子の場合
長男・悟の場合


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「休みの日まで仕事してるもんね」
子供の悟にも、休日をつぶして働く事が
どれだけ大変な事かはわかっている。

「今度の日曜はどこかにでかけような」
洋二は、こないだの日曜に仕事で遊んでやれなかった分、
次の日曜は家族サービスをしようと考えていた。

「あら、良かったわね。悟」
世の中には子供の世話を妻にまかせっきりにする男もいるらしいが、
美江子はそんな心配とは無縁だった。

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父・洋二の場合
母・美江子の場合
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「ママもどこか行きたい所、考えといてよ」
子供が生まれるとどうしても子供を中心に考えがちだが
洋二は、家事をやってくれている妻にも楽しんで欲しかった。

「あら、嬉しいわ。どこに連れてってもらおうかしら」
結婚してからというもの、たいした旅行もしていない美江子は
以前から行きたかった場所を片っ端から思い浮かべる。

「ねえ、僕の入れたシチューも早く食べてよ」
自分の注いだシチューをなかなか口にしようとしない洋二と美江子に
少しイライラした様子で悟が言った。

洋二と美江子は「わかったわかった」という感じで
箸を置き、シチュー皿に添えてあるスプーンを手に取った。

いつもと変わらない、家族団らんの夕食だった。

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