幸せ家族
−父・洋二の場合−
| 父・洋二 |
仕事を終えると真っ直ぐ家に帰る。
たまには飲んでかえる事もあるが、ほとんどの日は
六時半に家に着く。
もう何年も同じ事を繰り返している。
社会の歯車の一つになっている、面白くもない人生だ。
家に着いて、背広を脱ぎ、風呂に入って出てくると
ちょうど夕食の用意ができている。
これもいつもと同じだ。
今日はシチューと魚のフライ、それに野菜炒めのようだ。
俺はテーブルにつき、美江子と悟が座るのを待つと
夕食を食べ始めた。
「悟は何年生になったのかな」
子供ってのは気づかないうちに大きくなってるからな。
「六年生よね」
「そうだよ。来年はもう中学生だよ」
美江子と悟がそろって答えた。
娘は父親、息子は母親になつくらしいが
俺の家族も例外ではないようだ。
会っている時間が長いというのもあるだろうが
悟は美江子になついていた。
グローバル
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母・美江子の場合
長男・悟の場合
| 父・洋二 |
魚のフライを一つ取って食べる。
口の中で脂っこいフライがぐしゃっとつぶれた。
「今日のごはんもうまいな」
美江子のご機嫌もとっておいた方がいい。
妻というのはこういった少しの事を心がけるだけでも扱いやすくなるものだ。
でも悟の飯の方が量が多いんじゃないか。
最近は何でも悟の方を優先しやがって。
「うん。みんなで食べるとおいしいね」
「ありがとう。そう言ってもらえると作った甲斐があったわ」
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長男・悟の場合
| 父・洋二 |
「今日は悟がごはん作るの、手伝ってくれたのよね」
「うん。野菜とか切ったり、お皿にシチュー入れたのも僕だよ」
美江子と悟が、いかにも仲のよさを主張するかのように
そろって言った。
「そうか。悟、えらいな」
どうせ美江子が無理やり手伝わせたんじゃないのか?
最近、悟の奴も美江子のご機嫌の取り方がわかってきたみたいだからな。
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長男・悟の場合
| 父・洋二 |
「これからは男の人も料理ぐらいできないとね」
「そうだな。今は男もそういう事する時代だな」
なんだ。わざわざ悟にこんな事させて、
俺へのあてつけのつもりか?
嫌みったらしい事しやがって。
「うん。これからも僕がんばるよ」
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長男・悟の場合
| 父・洋二 |
「悟。どうだ、学校の勉強は」
と言っても俺の息子だからな。
俺も昔から勉強だけはダメだったな。
「うん。結構いい方だよ。こないだのテストも90点だったもん」
「そうね。がんばってるみたいね」
美江子の目が「あなたとは違って、出来がいいのよ」と語っている。
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長男・悟の場合
| 父・洋二 |
「パパもお仕事がんばってね」
結局、俺にプレッシャーばかりかけてきやがる。
「ああ。バリバリ稼ぐぞ」
美江子の奴、へそくりしてんじゃないだろうな。
こないだも見た事ない服着てたし…。
俺のこずかいももっと増やして欲しいよな。
「がんばってね。パパ」
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| 父・洋二 |
「実際、仕事の方もうまくいっててな」
前の出張経費ごまかしたけど、大丈夫だよな。
それぐらい誰でもしてることだよな。
「すごいじゃない。さすがパパね」
ほんとにそんな事思ってるのか?
どうせ悟の前でだけだろ。
「やったね、パパ。僕、友達に自慢できるよ」
悟も美江子と同じように、嫌みを言ってるような気がするな。
悟だけは本心で言ってくれてると信じたいが。
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| 父・洋二 |
「休みの日まで仕事してるもんね」
嫌みだな、これは。
こういう所は美江子に似たんだろうな。
「今度の日曜はどこかにでかけような」
こないだの日曜は理恵が急に旅行に行きたいなんて
言うもんだからな。
美江子に疑われないようにするのに大変だったよ。
「あら、良かったわね。悟」
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| 父・洋二 |
「ママもどこか行きたい所、考えといてよ」
そろそろこいつとも離婚して理恵と一緒になろうかな。
あいつも最近、結婚結婚ってうるさいんだよな。
「あら、嬉しいわ。どこに連れてってもらおうかしら」
美江子の奴、すんなり離婚を承諾するかな。
高い慰謝料、請求してきそうだな。がめつい奴だしな。
何とか理由つけて安い慰謝料で納得させよう。
「ねえ、僕の入れたシチューも早く食べてよ」
悟はどうするかな。
俺が引き取ってもいいが、美江子についていくって言いそうだな。
まあ、それならそれでいいか。
理恵と新しい家庭を作るのも悪くないな。
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