実写映画版「タッチ」。
原作マンガ、またはアニメ版を知っている人じゃないと
何の場面か、どんなキャラクターなのか絶対わからない。
双子の少年と幼なじみの少女の物語ということはわかるかもしれないが、
双子の弟の方が優等生であったり、
おちゃらけた兄が実は深い思いやりがあったり、
ボクシング部の原田はぶっきらぼうだけど
実はすごく男気があって人の感情に敏感だとか、
ゆっくりとしたテンポの中で
微妙に感じられる原作の空気がなくなっている。
次々と意味ありげに登場する人物たちが
いったいどういう関係なのかの予備知識が必要だ。
では原作を知っている人なら楽しめるかというと
当然、あのボリュームを2時間でこなすのは無理なのだ。
有名な、和也の死亡シーンまでに
野球を舞台に時間をかけて語ってきた人間関係があり、
これから当然のごとく盛り上がっていくであろうという試合の場面で
唐突に訪れる事故、というのが衝撃なのだ。
読者に十分に感情移入させた上で
何の前触れもなく事故の場面が挿入され
突然に和也を失った登場人物たちと同じ気持ちを味わう。
そこに名作と呼ばれた原作の価値があるのだ。
エースがいなくなった野球部へ和也に代わって達也が入部するが
部員の戸惑いや拒絶感があり、
それを乗り越える形で認められていく過程には
それなりの時間やエピソードが必要で、今回の映画には
名場面をただ順番に実写で再現しただけの意味しかない。
いっそのこと和也の事故後から話を始めれば
もっと深い話にできたのかもしれない。
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