オススメ作品:

擬態うつ病

2011年5月21日11:15【カテゴリ : 書籍


インターネット上でもさまざまな質問に答えている精神科医の林公一が
「擬態うつ病」と名付けた症状についての本。

鬱病が病気として有名になり、
症状や患者との接し方、治療法についても広まってきたが、
それに伴い、鬱病という診断を逆手にとって
仕事や学校を休んだり、周囲への自分に対する接し方に文句を言ったりして
自分の義務を果たさず、自分の要求を通すために
鬱病という病気を言い訳に使う人、
つまり「鬱病を擬態している人」が増えている、という内容。

鬱病に関して詳しくない人にもわかるよう、
まず実際の鬱病の症状や治療法、事例などを
非常にわかりやすく説明している。

そして本人の自覚の有無は別にして鬱病を装った「擬態うつ病」の例や
本来の鬱病との違いなどが整理して説明される。
個人的にもそうした「擬態うつ病」に当てはまる人を何人も見たことがあるし、
その特徴を的確に捉えている説明にも感心する。

インターネット上の質疑応答でも見て取れるが
林氏の理論的で明確な説明が素晴らしい。
とにかく読みやすい文章で、本として単純に優秀。
鬱病に詳しくない人や、
「擬態うつ病」らしき人と接する機会のある人にぜひ読んで欲しい。


横井軍平ゲーム館

2010年12月12日11:39【カテゴリ : 書籍


任天堂の代表的なおもちゃや、ゲームウォッチ、
ファミコン、ゲームボーイなどを手がけた横井軍平氏の
商品開発の記録とインタビューをまとめたもの。

1960年後半(昭和40年代)から1990年後半にかけて
話題になったさまざまな商品を生み出したが、
「枯れた技術の水平思考」というモットーどおり、
特別に新しい技術を使うのではなく、すでに広く利用されている技術を
今までとは違う使い方をすることで
コスト的にも優秀な商品開発ができるお手本である。

ひとつひとつの商品エピソードはあっさりしているが、
それぞれの開発の裏話や、
ひょんなアイデアがもとになっていることがわかって面白い。
創作活動が好きなすべての人にオススメ。

この本自体はすでに絶版となってしまったが、改訂復刻版が発売中である。


自殺うさぎの本

2010年11月29日11:00【カテゴリ : 書籍


いろいろな自殺の方法を試すうさぎの姿を表現した絵本。

かわいいノリのイラストばかりだが、
試行錯誤していろいろな自殺の状況が描かれており、
いかに死ぬのかを読み取るブラックユーモアの世界。
HAPPY TREE FRIENDS」に通じる面白さがあり、
残酷と取るか、興味を持つかは人次第。

基本的に文字ではなく絵だけで説明するタイプで、
その後にどんな展開になるか、また、どんな展開を経て
この状況になったかを想像するのが楽しい。全体的に高いセンスを感じる。
数コマを使ってマンガ的に時間経過を表現するページもある。

海外の漫画家による作品だが、イラスト内の文字の部分も
日本語に翻訳されているので安心。


これが本当のSPI2だ!

2010年11月19日11:06【カテゴリ : 書籍


就職活動で数多くの企業が採用しているSPI試験について
特に非言語問題の解き方を解説した書籍。

広い範囲から出題されるSPI試験において
まずどこから手を付けるか悩み、
それぞれの解き方を理解することに苦労している学生にとっては
効果的に基礎的な対応能力を上げられる内容ばかり。

出題頻度の高いもの順に並んでいる工夫をはじめ、
ひとつひとつの例題の解き方を丁寧に解説していて
問題種類別にどのように攻略していくべききが理解できる。

数をこなすタイプの問題集ではなく、
今後、同系統の問題を解けるようになるための解説本。
まず最初にこの本で理解を進め、
あとは他の問題集でひたすら問題を解いていくと良い。


もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら

2010年7月31日11:34【カテゴリ : 書籍


タイトルにある通り、高校野球のマネージャーが
経営学に関する書籍で有名なピーター・ドラッカー氏の「マネジメント」を読み、
それを実践する形で野球部を手直ししたらどうなるか、という小説。

最初のきっかけは野球部の女子マネージャーが
いいマネージャーになるために書籍を探し、
経営者や管理者という意味での「マネージャー」と勘違いして
経営学の本を手にしたところから始まる。

本来は企業や、またはそこで働く人にとってこその書籍だが、
それを野球部の現状に当てはめる形で読み解くのが面白い。
本としては非常に読みやすく、手軽に手を出せる文体で、
主人公が経営学に疎い女子高生ということもあって
専門的な知識や用語が何もわからない人にも十分に理解できる。

むしろ、本来ならどうしても抽象的になってしまう表現、
たとえば「顧客」や「マネジメント」に絡めた書籍の表現が
野球部の場合にはどうなるかという具体例に当てはめて展開していくので
現実的なイメージをつかみやすくてよい。

女子高生である主人公が妙に勘がよかったり、
補助してくれる周囲の人物に恵まれていたりするのはご都合主義的だが、
経営学に疎い人が興味を持つ最初の一冊としては最適。
ストーリーとしても中盤以降の盛り上がりは素晴らしく、
やってきたことがどんどんと報われていく様子は読んでいて気持ちがいい。
すべてが綺麗に収まっていく展開に感心し、感動させられた。

主人公となる女子マネージャーの名前が全部ひらがななので
付近の文字と混ざってしまって区別しづらいのは残念。

とにかく敷居が低く、興味が湧かなければただの小説として読破すればいいし、
経営学に興味がある人にはケーススタディの例として参考になる。

【同シリーズのレビュー】
もしドラ(アニメ)


iPad vs. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏

2010年6月22日15:31【カテゴリ : 書籍


Amazonが提供する電子書籍リーダー「キンドル」と
アップルの提供するタッチパネル端末「iPad」をベースに、
電子書籍に関する様々な現状を解説した本。

内容の大半は「今後どうなるか」ではなく、
「現時点での電子書籍はどうか」という部分で占められるが
各商品の戦略がわかりやすく語られ、非常に楽しめる中身だった。

特にキンドルはその商品についてある程度は知っていたが、
それ以上にAmazonが仕込んだ戦略や方法を理解することができ、
かなりの刺激を感じた。

各企業が絡み、電子書籍を読むためのリーダーとしてのハード部分と、
そこに入れるための書籍データとしてのソフト部分とが
それぞれ深く戦略に絡んで作られており、頻繁に「なるほど」と思わせられる。
電子書籍を含め、新しいもの好きな人にオススメ。


ホームレス中学生

2010年3月30日12:07【カテゴリ : 書籍


お笑いコンビ麒麟の田村による中学時代の自伝。
「人志松本のすべらない話」で語られた家がなくなった話からスタートし、
辛かった生活からその後の流れまで。

文章としては稚拙だが、シンプルで読みやすく、
まさに中学生が独白しているような雰囲気でなかなか良い。

最初こそ「すべらない話」で聞いていた内容が
やや長めに書かれているだけかと思ったが、
誰もが味わったことのある中学生という時期が感情移入を助け、
辛すぎる生活が早く改善されないか気になって読み進めてしまう。

そして家族をはじめ、田村の周りで支えてくれる人々が
あまりにもいい人ぞろいで気持ちいい。
田村は今、芸人としてやっているわけで
なんらかの流れでなんとか無事に生活できたはずとわかっているが、
それでも読んでいるうちはどうやって切り抜けるのかと心配するばかり。
そこを手助けしてくれる周囲の人々。それに感謝する田村。

つたない文章だが後味が良く、
読みやすい上に読み応えもある。意外にも良作だった。


若者はなぜ3年で辞めるのか?

2009年9月30日12:26【カテゴリ : 書籍


非常に面白く、わかりやすい内容。
会社という仕組みと、ルールや方針を決める人の思い、
そういった体質から来る弊害がきちんと説明されている。

終身雇用、成果主義、年功序列、リストラ、派遣社員など
用語としては誰でも聞いたことがあるものだが、
会社がどういう意図で動いているのかを知ることができる。
建前でどういう立派な理屈を言おうとも、
実際にはこういう都合があるのだ、ということがわかる。

また、一見、問題に対する正しい対策に思えても
長期的な目で見ると会社と未来がなくなってしまう場合があることも
わかりやすく端的に説明されていて興味深い。

会社に数年以上勤めたことがある人なら
誰しもが思い当たる内容が書かれており、
それが嘘ではない事実であろうということを感じる。
場合によっては自分の現状がいかに脆いものか実感して
非常に怖くなる部分もあるほど。

しかし、だからこそ事実を知っていて欲しいと思う。
若者を部下に持つ立場の人よりも、
これから社会に出る大学生、専門学校生、高校生にこそ
ぜひ読んで欲しい内容だと思った。

インパクトのあるタイトルだが、「若者が辞める理由を知りたい人」ではなく
「今後、3年で辞めてしまうかもしれない若者」になりそうな人向けなのだ。
少し将来が不安に感じる部分もあるが、何も考えずに
どこかにスムーズに就職できればいい、という浅はかな考えはなくなるはずだ。


竹原慎二のボコボコ相談室

2009年9月18日12:07【カテゴリ : 書籍


Web上で掲載されている元ボクサー・竹原慎二の
素晴らしく鋭い悩み相談「竹原慎二のボコボコ相談室」を再掲載した本。

やけに甘えていたり、ウジウジ悩む相談者に痛快な一撃を叩き込むのは
読んでいて気持ちがいい。
これだけ短い文章で有無を言わせず納得させる回答も素晴らしい。

反論の余地のない正論と、
社会の厳しさをズバッと言い当てるセンス。
自分の経験談もまじえて社会の真理を突いた解説。
妙な優しさで甘やかさないところが逆に信頼できる。

相談内容を読んでイラッとして、
直後の竹原のコメントを読んでスカッとするという
連続技が中毒になってくる不思議。

最後の「今月のテンカウント」で語られるセリフに
素晴らしい優しさが詰まっているんだけど、
それが相談者に伝わるかが心配だ。

書籍に掲載されるにあたり、文字の大きさがいじられている点が非常に残念。
おそらく竹原本人ではなく、出版側の人間が
文章中の目立つ表現をより大きなフォントに変えたのだろうが、
これが本来の回答の性質を変えてしまっているような雰囲気が多く、
単に暴言を吐いているだけの印象が強まったのが厳しい。

質問が左ページに書かれており、めくると回答が書いてあるレイアウトはいいとして、
回答一発目の一言と、回答文章中の
センスのないフォントサイズいじりに左右されず、
文章の本質を読み取って楽しんで欲しい。


ニンテンドーDSが売れる理由 ゲームニクスでインターフェースが変わる

2009年7月8日12:01【カテゴリ : 書籍


タイトルが「ニンテンドーDSが売れる理由」なので
ニンテンドーDSの分析や、任天堂の戦略について
書かれているような想像をするが、
実際にはゲームを作るときのユーザーへの配慮である
「ゲームニクス」について書かれた本。

そういう点での内容は非常によく、
特にどんな形であれゲームを作る立場の人間や
ゲームを開発するときの工夫に興味がある人にとっては
なかなか読み応えがある良本。
とにかくタイトルと内容のギャップが激しいのが残念でならず、
本を売るために「ニンテンドーDS」の
ネームバリューを借りようとしたとしか思えない。

ゲーム開発業界を目指している人や、フリーソフトなどでゲームを作るなら
画面や操作系の工夫・配慮について再確認できる本だと思う。